Idea Session
「Z世代起業家の社会を変えるアイデアの作り方」
<SPEAKER>
田坂克郎
渋谷区 グローバル拠点都市推進室長
工藤柊
株式会社ブイクック 代表取締役CEO
高木俊輔
株式会社Civichat 代表取締役
山本愛優美
Nexstar CEO
野村優妃
株式会社リベラベル 代表取締役CEO
まず実現したい世界線があり、起業はそこに到達するための手段
90年代後半から2000年代に生まれた世代を指す「Z世代」。これからの社会を支える若者たちの間では、それまでの世代にはない新しい視点で事業を立ち上げる起業家が増えています。
このセッションでは、ヴィーガンレシピ投稿サイト「ブイクック」などを手がかる工藤柊さん、チャットボットの質問に答えていくだけで自分に合った公共制度が分かる「Civichat」を手がける高木俊輔さん、心拍に合わせて光るイヤリング「e-lamp.」の開発などを手がける山本愛優美さん、ストローブランド「Dlink Straw」を手がける野村優妃さんの4人のZ世代起業家と、渋谷区グローバル拠点都市推進室長の田坂克郎さんが登壇。それぞれのビジネスアイデアを生み出した要因やこの世代から生まれたソーシャルアクションに対して行政に求める支援などについて、意見を交換しました。
N高校在籍時代に起業したという高木さんは、当時、奨学金を探していたことが起業のきっかけになったといいます。
「奨学金自体の数は沢山あるものの、数が多すぎてどれが使えるのかわかりにくかった。そこで質問に答えていくだけで、自分に合った奨学金を発見できるものがあれば便利だと考えた。ただ、その中でこれは奨学金に限った問題ではないと思い、自分の身の回りの問題を解決するソフトウェアを作ることにしました」
一方、ジャック・マーが起業家としてのロールモールだと語る野村さんは、起業家を目指した理由として「元々は弁護士を目指していたが、起業家であることで選択肢を作り出していくところにパッションを感じた。そして自分が作りたい社会のビジョンをどういうふうにしたら事業に落とし込めるのか、いろいろと模索した」と語ります。
「お金を稼ぐよりも自分が実現したい世界線があり、そこに到達するための手法として起業があるが、それで事業を成り立たせることはできるのか? 」というテーマでは、以前はNPOで稼ぎたいと思っていたという工藤さんが「NPOだと出た利益を全部違う事業、違う取り組みに使えるので、NPOで稼ぐのはとてもかっこいいし、そう思ってもらえる人が増えるといいなと思っていた」と発言。
現在、工藤さんはNPOではなく株式会社のかたちで事業を行なっていますが、その理由として、NPOより資金調達の方法も多様であることや、10人以上の正会員を必要としないことなどを挙げつつ、自分が一番コミットすることでスピード感を持って事業を行なえることから方針を変更したといいます。また、その中で最初にやりたかったことが現在も運営するヴィーガンレシピ投稿サイトだったとも。
「スタートアップの初期コストをどう国が負担するのか?」というテーマでは、田坂さんが「課題ドリブンのスタートアップ企業は今既にないものを提供しようとしているから、絶対に資金調達には時間がかかる」という認識を示した上で、行政による資金調達用のファンドの設立を提案します。
「例えば、自治体だけだとコロナ禍にうまく対応できなかったので、これからの世の中を考えると色々と試していく必要があると思う。そう考えるとみなさんがやっているような事業を行政が支えていく必要がある」
また、山本さんは「研究を基にプロダクトを作るような研究発のスタートアップを支援していく流れは出てきているものの、大学などが支援基盤をつくっていく仕組みはまだまだ発展途上という印象がある。今後は行政とアカデミアがもっと連携しながら起業を支援していくことが大事になってくると思う」とも。
高木さんは、今後渋谷区に求めたいものとして、「ソフトウェア公共財」を挙げ、その理由についてこう語ります。
「道路などの公共財は基本的に税金によってつくられているが、今後はソフトウェアも公共材になり得る。そこにもちゃんとお金を捻出してほしい。ソースコードの一部を公共に公開する『オープンソース・ソフトウェア』という仕組みで開発するという条件をつけるなどすれば、国も助成金や補助金を出しやすいと思う」
山本さんは、「登記をすると代表の自宅がわかるようになるので、ストーカー被害などの被害に遭うことも考えられる。そもそも表に名前が出る人がそういった被害に遭いやすいという状況は良くないし、怖いので対策を講じてほしい。また登記は費用も高く難しいので、優しく支援してくれる施設があれば、背中を押される若手起業家も多いはず」と。
今回のトークセッションで議論されたアイデアが社会に実装されることで、Z世代やそれに続く若い世代の起業家たちがより活躍できる環境が整備されていくことになるのではないでしょうか。