オープンかつ多様であることがスタートアップに必要なイノベーションを起こす——石井芳明/Justin Waldron/Jonathan Siegel/Daniel Heffernan/田坂克郎

「グローバルスタンダードなスタートアップの街になるために」
<日時> 11月13日(金) 12:30-13:30
<会場> SHIBUYA QWS

<登壇>
政策統括官(科学技術・イノベーション担当)付オープンイノベーション担当企画官
石井芳明
Zynga共同創業者
Justin Waldron
Xenon Partners CEO
Jonathan Siegel

ストライプジャパン株式会社 共同代表取締役
Daniel Heffernan
モデレーター:
渋谷区 区民部 副参事 国際戦略推進担当課長
田坂克郎

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2020年、日本のスタートアップシーンを活性化するため、内閣府が開始した「世界に伍するスタートアップ・エコシステム拠点都市形成戦略」によって、渋谷をはじめ多くの自治体でスタートアップ事業に力が入るきっかけになりました。このセッションでは、どうすれば渋谷や日本の都市がグローバルスタンダードなスタートアップ集積地になるのかをテーマにトークセッションを行いました。

渋谷区がスタートアップ事業に力を入れることにしたのは、日本政府と一緒に取り組みたいと思っていたことが理由にあります。一方で、日本政府が「Global Startup Ecosystem Cities」プログラムを始めたのは、社会的問題を解決し、明るい社会を作るためにはイノベーションがとても大事になっており、今後、さらなるイノベーションを起こすためには、機敏性があり、リスクを負う姿勢のスタートアップが非常に重要なプレイヤーになるといいます。

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その上で石井さんはこう語ります。「日本のスタートアップをグローバル市場までに育成するのは大事な課題。日本政府としても達成するためにはエコシステムにフォーカスしなければならないことに気づいた。エコシステムには起業家だけでなく、大手企業や大学や他の特別なプレイヤーが重要になってくる。世界のトレンドを見ると、都市がイノベーションエコシステムやスタートアップイノベーションを創造する競争が増している。それが世界規模のスタートアップ・エコシステムの基本。今後、沢山の外国からの投資者、企業家も引き込みたい。」と。

一方、海外から来たスタートアップにとって、日本の市場は、自分が真実だと思い込んでいたことややってきたこととは異なる現実があり、人々は様々な見方をしているため、そこに大きなチャンスがあるといいます。Justinさんは、ビジネスをするにあたり日本を選んだ理由について、「ゲームに関して日本は世界で最も大きい市場の1つで、日本のエコシステムについて調べた時にガラケーや日本のイノベーション文化や異なったエコシステムについて学んだがそれが興味深かった」と語ります。

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日本への留学経験があるJonathanさんは、「日本の市場で技術や投資について何ができるかにチャレンジしている」と語り、Danielさんは、「日本は市場として大規模だが、その反面、進出するのが難しいところもある。多くの海外企業が日本の市場に参入しようとして失敗していると思う。多くの海外企業にとって、日本は他の市場では普通だったことが通じない。それが日本の市場と自分たちのことをについて学ぶ機会になった」と語ります。

そんな日本市場では、以前は良い大学を出た人の多くが大企業に就職するという傾向があり、企業を考える人はあまりいなかったものの、10年前と比較して、起業したいと思う人が増えてきたという見解を示したのはJustinさん。Jonathanさんは、これまでにアイルランドでは、沢山のテック・スタートアップが成功している例を挙げながら、「これから日本も将来的にはそのような展開になる」という認識を示しました。

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一方でDanielさんは、「日本には職人文化に見られるように完璧主義の文化があるように思う。でもソフトウエアやテクノロジーのスタートアップに関してはそれとは違う視点からフォーカスする必要がある。特にエコシステムやエコシステムの作り方に関しては失敗に対する安心感が持てるようになることが重要だ」と語ります。また「失敗とやり直しを繰り返し、経験を積み重ねていき、成功したら次に移り、退場する。そして、メンター、または次世代の起業家の資金援助者にならなければならない。だから失敗から学ぶことは重要で語学を学ぶことと似ている」と続けました。

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そのことを踏まえて、田坂さんが石井さんに「日本人はなぜ失敗を恐れるのか?」と質問。SonyやHondaなど当初はスタートアップだった日本の大企業を挙げつつも石井さんはこう言います。
「日本の社会的構成がリスクを負うような行動を起こすことを難しくしている。でも、今は第4次ベンチャーブームを体験しており、そういった成功事例が出現し始めたことがきっかけになって、考え方が変わってきている。起業家はお金だけにフォーカスするのではなく、世界を変えようとしている」

とはいえ、スタートアップの現場が進化し、考え方も変化しているにもかかわらず、他のグローバルな都市と比べてまだ課題を抱えている日本。外国からの投資家が日本に来ることを妨げる主な理由として挙げられたのは、契約書が日本語だけだったり、現地パートナーが英語ができないなど言葉の問題でした。

Danielさんは「日本では例えば英語圏からの製品がすんなり通用しないので一からブランドづくりを始めないといけない。そして、信頼が大切にされるため、ブランドを作り上げるにしろ、海外からもってくるにしろ、国内で育てるにしろ、時間がかかる」と語りました。
しかし、石井さんは規制改革を担当する河野大臣とデジタル化を担当する平井大臣の2人のリーダーは官僚的な課題などに対して、非常に早く動いていることを例に挙げ、「規制は重要かもしれないが、日本政府はそれをデジタル社会に通用できるように動いている。このような動きが始まっているので外国からのスタートアップを招き入れるにはタイミング的にいいのかもしれない」との認識も示しました。

Justinさんは、「我々が向き合っている課題は人事に関することで、具体的には日本での雇用に関する法律。言葉は1つの問題で、もう1つはどうやって日本人を法的に雇用できるのかということ。この2つを解決できれば、世界のどこからでも日本人を雇用できるようになる。そして、その人が他の会社で学んだことを伝えられるのであれば、日本のスタートアップのエコシステムの一部になれる」と語ります。

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また、税制優遇の面でアイルランドにも会社を設立したが、シリコンバレーの会社がどんどん大きな事務所を構えるようになると、その機能がもっとアイルランドに移され、それが次世代の会社に伝えられるといいます。そこのことについては、「コロナ禍をきっかけに会社が配分的な労働人口を考えるようになったことで、日本でもそのような人材がその一部になれる機会が生まれた」とも。

「雇用、就業規則と税金の課題は重要だと認識しているが、難しい問題でもある。でも続けて解決に試みたいと思う」と語った石井さんですが、「税金や就業規則に関して、例えば渋谷だけでも適応する仕組みを設けることはできるか?」という質問に対しては、「Global Startup Ecosystem Cities」プログラムで設けられている特区について説明。
「特区に関して福岡市では、国税および地方税を減らす新しい税制の仕組みを導入した。また、スタートアップ・ビザ・システムを開始し、海外のスタートアップを支援している。これは良い実例だ」

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さらに「日本に海外の投資家を呼び込んだり、日本の投資家に権力を与えるような取り組みを始める計画はあるか?」という質問に対しては、海外の投資を引き込むのは大きな課題で語学が重要だと考えている。日本ではスタートアップのエコシステムやスタートアップに関する良いコンテンツがないため、もっと英語でのコンテンツや物語を創りたいと思う。そして、海外の投資家に対して発信することが重要で、すでに日本にも進出している海外のパートナーやベンチャーキャピタルのルートをもっと使用したいと考えているが、さらに強力なつながりも作らなければならない」と語りました。

Justinさんは、それに対して「各ファンドは違う分野や会社にステージ別にフォーカスする。日本ではその段階がアメリカと違う。チャレンジは良い会社、商品を紹介することではなく、ファンドはそれでお金になるかという計算が必要で日本への投資の場合はそれが重要。難しいのは自分を援助する信頼できる人を見つけることだ」と語りました。

またトークセッションでは、最後に「スタートアップを始める場所として渋谷をどのように見ているか?」についても意見交換。
「アメリカではエンタメ業界はテクノロジーや自動車産業から離れているので、渋谷は多様な分野がたくさんまとまっている印象がある。1つの街にまとまっているのはスタートアップには良い環境。より深いアイデアが沸き起こり、イノベーションにつながるはず」とJustinさん。

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Jonathanさんは「自分もスタートアップだから、引き寄せられるように同じ仲間が集まって来る場所があったら素晴らしい」と続けます。石井さんは「イノベーションの地域をつくるにはオープンであることと多様であることが非常に重要になってくる。渋谷にはそのような要素があるのでイノベーションやクリエイション、スタートアップや多様性のプレイヤーとして先頭に立てるといいと思っているし、それを願っている」と語りました。

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