未来の学校〜学びと遊びの可能性〜
<登壇>
Serena Sacks-Mandel マイクロソフト米国本社 教育部門最高技術責任者兼最高改革責任者
Dr. Keith Osburn ジョージア州教育省 最高情報責任者兼副監督官
松澤香 渋谷区副区長
丹羽恵久 ボストン コンサルティング グループ マネージング・ディレクター&シニア・パートナー
AIやデータを活用し、生徒のウェルビーイングを高める「未来の学校」のかたち
未来をよりよく生きるための力を養える「未来の学校」とは、どのような形であるべきでしょうか。
渋谷区が進めている「未来の学校」、またグローバルにおける同様の事例を紹介しながら、「未来の学校」「未来の学び」について議論を深める本セッション。モデレーターに、シブヤモデル「未来の学校」推進支援業務を担当するボストン・コンサルティング・グループの丹羽恵久さんを迎え、この10月に渋谷区副区長に就任し、9月までは教育委員会に委員として4年強携わってきた松澤香さん、加えて、海外の事例の紹介者として、マイクロソフト米国本社で教育部門の技術責任者兼最高改革責任者を務めるセレーナ・サックス=マンドルさん、米国ジョージア州教育省の最高情報責任者兼副監督官キース・オズマンさんが登壇し、それぞれの立場からお話されました。
まずトークは、渋谷区が進めている「未来の学校」で目指す新たな学びの姿について。
⑴ AIとデータを活用することで個別最適化された、かつ探求学習中心のカリキュラムで学ぶことができる学校
⑵ リモート環境によるリソースシェアで“多様”で“本物”な体験を提供できる学校
⑶ 学びの協創空間を設置し、課題解決型の学びをサポートし続けられる学校
⑷ それらの実現に不可欠な先生たちの意識・役割の変革を、DXによる業務改革でサポートする学校
を目指して議論を深めている最中だ、と丹羽さんは言います。
松澤さんは、「教育のありかた、パブリックスクールについては保護者からしても社会からしても重要な関心ごと。日本における人的資本の重要性、少子高齢化を考えた上でも、新たな学びの場をどう作っていくかは非常に重要なテーマ」。加えて「渋谷は“ちがいをちからに変える街”そして“グローバル拠点”を掲げています。渋谷区が国に先駆けて、未来のパブリックスクールのあり方を作り、それを全国に広げていくことが大事」だと話します。
また、本セッションでポイントとなったのは、AIやデータ、テクノロジーの活用について。実際に渋谷区でも、2019年からひとり1台タブレットを配布し、生徒たちは文房具がわりに使っている、と松澤さんは話します。
マイクロソフト社で世界中の教師やソートリーダーと話す機会があるというセレーナさんは、「生成AIを利用することで、生徒も教員も多くのことを学ぶことができます。ただ、私の信念では、未来の学校とは、あくまで人間を中心としたもの」と話し、大切なのは、ヒューマンスキルだとセレーナさんは説きます。「テクノロジーは、あくまで道具。テクノロジーを使って最適な教え方ができる人間を育成することも重要ですし、評価の仕方なども再考する必要がある」
また、キースさんは、「テクノロジーも日進月歩、進歩しています。我々がフォーカスしているのは、生徒に対してどのように準備してあげれば、テクノロジーの世界で生き残っていけるのか、より生産的で幸せな生活を送っていけるのかということ」だと言います。また、テクノロジーは、先生の役割、保護者の役割、コミュニティの役割を置き換えるものではなく、それを活かすことで、生徒自身も効率的な個別最適化された学習を自らできるようになるものだと考えて活用することが大切だ、とも。
加えて、セレーナさん、キースさんからは、探求型学習に関する事例、生徒の“ワクワク度”の上げ方についてもお話がありました。
松澤さんは「生成AIの可能性と、人との役割分担は、大きなポイントになってくる。子どもたちが中心にいる教育。自分たちで課題を発見し、自律的に学んでいくことが大事だと渋谷区でも考えている」といいます。
「今後は探求学習の時間を増やし、ひとりひとりの生徒が自分の人生や社会について考え、課題を発見し、どうやって解決していくのかを導き出せるようになるための教育にも力を入れていきたい。そのために、渋谷区のステークホルダー全員で取り組んで行こうと考えています」