就活の「服装自由」は不自由なのか？企業と学生のカルチャーマッチに必要な視点とは

「EXPRESS YOURSELF 就活の服装自由は不自由なのか？」
11月10日（木） 13:15-14:00
＜登壇＞
平松 葉月（青山商事株式会社 リブランディング推進室長）
寺口 浩大（株式会社ワンキャリア Evangelist）
吉柳 さおり（ベクトルグループ 取締役副社長 兼 株式会社プラチナム 代表取締役）
金山 淳吾（SIW エグゼクティブプロデューサー）

同じような服装、同じような髪型、それが当たり前と思っていた学生の就職活動。ありのままの自分をどうしたら表現でき、尊重してもらえる世の中になるのかをテーマに、4名のスピーカーが登場。

まず平松さんは「洋服の青山」を全国に展開する青山商事とNewsPicksが立ち上げた共創コミュニティを紹介。「ビジネスパーソンと共に、社会課題に寄り添い続ける」という目的のもと様々なプロジェクトを進行している中で、今回は「#きがえよう就活」にスポットライトを当てていきます。

平松さんはプロジェクトが立ち上がったきっかけについて「就活によって『個性が死ぬ感覚があった』という言葉がメンバーから発せられた」と振り返った上で「わたしたちはリクルートスーツを売り続けていた会社だけど、今の時代はどんどん変わっていくところにビジネスパーソンと一緒に取り組むことがすごく重要なのではないか」と現在の試みの意義を語りました。

「企業がどういうカルチャーを持っているのか、学生から見えないのが今の状況。そのためどこまで自分を出せるか、この企業が自分に合うか、という判断ができないため、その状況を変えることで自分らしさを出せる就活になるのではないか」（平松さん）

ベクトルグループの人事部長も務めている吉柳さんは、自社の面接でリクルートスーツに限らず自由な格好で来てほしいと学生にはっきり伝えているそう。クリエイティブな人材の採用を考えた結果「ファッションも個性の一つ。どういう表現でプレゼンテーションしてくるのか見たかった」と説明しました。

一方で、金山は「自由が逆にストレスになる就活生もいるのでは？」とコメント。平松さんは「自分は服装に詳しくないし、一番かっこよく見せられるのが黒のスーツだと思えたらならそれでいい」とし、「私の個性は服ではなく中身です」と自分の言葉で語れることが重要だと話しました。

寺口さんによると、それでも没個性に陥ってしまう学生がいることについて「リアリティが見えていない」ことが原因の一つだとしながら、企業側が「カルチャーのオープン化が”服装自由”のテキストで終わってしまっている。せっかくグラフィックの時代、動画の時代なんだから」と多様なフォーマットの情報発信を促進すべきだと強調しました。

また自由が尊重される一方で、マナーやモラルとのバランスはどう保つべきなのでしょうか。平松さんは「マナーと自己表現は別のこと。それが一緒になってしまっているのが就活。マナーはマナーで学ばなければいけない」としながら、そのマナーが社会人のマナーではなく就活をするためのマナーとして教えられている」ことが問題だと指摘。

吉柳さんは自身が社会に出た際のエピソードを用いながら、「世間にはマナーとルールがあると学んだときに『自由であればいい』わけではないと知った」と振り返りました。

この話を受けて、金山は「就活のマナーだと言われていたものの正体は“ルール”だったのではないか」と推測。「ルールは決め事、型があるもの。でもマナーには型がなく、『相手に対して何を届けたいのか』を考えた先にあるのがマナーだから、そこを育めるといいんじゃないか」と考察しました。

「時代の転換点」というキーワードが何度か出てきた今回のトークセッション。選択肢が増え、自由な道が増えていくことは望ましい一方で、挑戦に孤独はつきものだからこそ戸惑いと不安を感じている学生も多いはずです。先陣を切って時代を推進する企業がさらに増えていくことで、学生が挑戦できる社会になるのではないでしょうか。