「新しいい未来」とは? 鋭い発言が飛び交う予定調和なしの自由放談!
「新しい未来のつくり方」と題された「SIW2022」初日最後のセッション。スピーカーは、独自の視点と発想、歯に衣着せぬ鋭い発言で注目を集めるイェール大学助教授・経済学者である成田悠輔氏、そして成田氏と同級生であり、部活動も一緒だったというプロゲーマーのときど氏を迎えます。「新しい未来」という抽象的なテーマですが、まさに「自由放談」が縦横無尽に展開されました。
「新しい未来のつくり方」
11月8日(火) 18:00-19:00
<登壇>
成田 悠輔(イェール大学助教授/経済学者/半熟仮想株式会社代表)
ときど(ロートZ!所属プロゲーマー)
中馬 和彦(KDDI株式会社 事業創造本部 副本部長 兼 Web3事業推進室長 兼 LX戦略部長)
金山 淳吾(SIWエグゼクティブプロデューサー)
イントロダクションでは、成田氏とときど氏の山岳部時代の思い出話が披露され、和やかなムードでスタート。その後、ファシリテーターを務める金山が「未来」の切り口でeスポーツ、プロゲーマーについて自身の過去を振り返りながら、ときど氏に質問をしました。
「自分の子供の頃は、ゲームはいつかは卒業しなくてはいけないものだった。いまではeスポーツと呼ばれ、プロ化している。いつからプロになるって思っていましたか?」(金山)
「僕も東大に行っていて、プロゲーマーになろうとは思っていませんでした。ゲームはお金にならないので。そんなときに自分のライバルが、ゲームで食っていくと宣言したんです。それを聞いて、今までゲームにかけた時間や努力を無駄にしたくない、自分もやりたいと強く思うようになりました」(ときど氏)
成田氏とときど氏は、麻布中学校・高等学校、東京大学卒業という、いわばエリート中のエリートの道を歩んでいます。突如、プロゲーマーの道を選んだことは、当然のように周囲の猛反対にあったと言いますが、成田氏はこう発言します。
「当時のeスポーツ分野はこれから確実に成長する市場で、プレーヤーが少ない。だから、魅力的なマーケットだったと思いますし、ゲームがプロ化していくのは人間の歴史を見ると、自然な流れ。カーリングもゲームに近いですし、これまでもスポーツという枠組みに入れることによって産業になったものは多い」(成田氏)
さらにゲームと現在の社会構造をなぞらえてこう続けます。
「大事なのはゲームデザイナーのメンタリティを持つこと。政治とか経済になるとなぜか皆さんが思考停止する。社会のルールは変えられない法則だと思い込んでいますが、現行ルールの歴史は200年くらい。ちょっと昔に作った人のゲームに過ぎない。じゃあ、ルールをどうやって変えるか? もしくは違うゲームにしてみるとか、そういう発想が大事になる」(成田氏)
この発言を受けて、KDDI株式会社でメタバースの研究をしている中馬氏もゲームメイカー、ルールメイカーになることの重要性を強調します。
「国や企業の境界線が曖昧になってきているなかで、カーボンニュートラルやSDGsは世界中で取り組んでいる。これもヨーロッパが提唱したルールなんですが、現実的に地球が危ないのは事実なので全世界で取り組まざるを得ない。Web3やメタバースも同様でプレーヤーになるのではなく、ルールメイカーになれるチャンスがある。だから、みんなが飛びついている」(中馬氏)
いよいよ、「新しい未来のつくり方」の本丸に話題が移るのか、という予想は簡単に覆されます。このメンバーに予定調和などなく、どんどんを面白い方向に話は脱線していきます。格闘ゲームの進化の先、人が考えていること、やりたいことの9割が、脳波を調べることメタバースに再現できること、日本でのイノベーションが起きない理由、犬や猫と人間がゲームで対戦できる可能性、コミュニケーションに制限を加えることで起きうる変化……などここでは書ききれない様々なトピックが飛び交います(ぜひ、アーカイブ動画をご覧ください)。
Web3、メタバース、NFTなど昨今話題となっているデジタル技術に関しての問いかけにも成田氏は「特定の技術に注目することはない」と断言しつつ、下記のメッセージを投げかけます。
「なぜなら、何かひとつのもので世界を変えるようなイノベーションは考えられず、今後数十年小さな技術革新が起こり続けて、数百年かけて社会を変えていくプロセスになるからです。でも、それだと注目されないからメディアがそのようなバズワードを作っている。それに惑わされないで、大きな流れをみていくことが大事」(成田氏)
未来や将来を考える際に、ときには誇大に、その一方で「自分が生きている間」での出来事で創造してしまいます。現在の変化は、昔から始まっている変化のいち過程であり、社会変革は数百年かかるものである。個々人の人生の主役は自分自身ですが、ときには客観視すると同時に世界を構成する要素に過ぎないことを自覚することで、現実的にそれぞれの新しい未来が見えてくるかもしれません。