スマートシティはちょっとださい!? 渋谷の未来とスマートシティについてアイデアが飛び交う名セッション
「渋谷スマートシティ推進機構」の発足に伴い、そもそもスマートシティとはどんなもの？ 具体的に渋谷はどんな街になるべきなのか？を豪華スピーカー陣を迎えて、闊達な議論を展開しました。

「シブヤ・スマートシティの未来図」
11月11日（金） 11:00-12:00
＜登壇＞
澤田伸（渋谷区副区長 CIO）
伊藤穰一（株式会社デジタルガレージ 取締役 共同創業者 チーフアーキテクト）
林千晶（株式会社Q0 代表取締役社長）
小泉秀樹（一般社団法人渋谷未来デザイン代表理事）
金山淳吾（SIWエグゼクティブプロデューサー）

今回SIW2022の期間中にも幾度となく飛び交う「スマートシティ」という単語。皆さんはどのようなイメージを持っていますか？ また具体的に言語化できるでしょうか？ 実はそれぞれが持つイメージは異なるけれど、なんとなく共通認識をもつものとして便利使いされているのかもしれません。まずは4人のスピーカーに「スマートシティってなんですか？」と単刀直入に金山が投げかけます。

「一般市民の方からすると馴染みのない言葉かもしれない。技術を使ったイノベーションやモビリティやチーフイノベーションオフィサーがいるなど面白い自治体は世界中にいっぱいあるけれど、都市自身がスマートシティと呼んでいる例はあまり聞いたことがない」（伊藤さん）

と海外生活が長い伊藤さんが「スマートシティ」の違和感を述べると、小泉さんは「人を豊かにするために、テクノロジーを積極的に活用している」とニューヨークを例に挙げます。一方で「テクノロジーを使って豊かになっているという意味では中国の都市かもしれない」と林さんが語るなど、スピーカーそれぞれもスマートシティに対する認識が異なる事実が判明します。

すると、渋谷区副区長の澤田さんは

「スマートシティを適切な言葉に置き換えなきゃいけないとずっと思っていました。でも、なかなか見つからなくて、馴染みが薄い言葉を使うとメディアも市民の方々も混乱してしまう。個人的には『スマート＝居心地がいい』が一番はまっていると思っているのですが」（澤田さん）

と正直に伝えると、

「サービス提供側が使いたい言葉なんですよね。受け手からすると、ネガティブな意味で統一されたって印象やちょっとださいイメージがある（笑）」（林さん）

と本音を突き刺します。これをきっかけに、伊藤さんがさらにスマートシティへの違和感を吐露します。

「スマートは英語だと賢いになる。女性が結婚相手を選ぶときに偏差値が高いことが一番重要なわけではなくて、愛とか価値観を大事にする。スマートって最重要項目ではない気がするんですよね。私の家はスマートキッチンって自慢したら変なわけで、本来は料理が得意っていうべき。そんな違和感」（伊藤さん）

この発言にはスピーカーの皆さんが苦笑しながらも首肯するしかないといった様子。このタイミングで「スマートシティ」が持つ言葉の意味が先行してきたので、オブザーバーである金山が「渋谷はどうあるべきか？」に質問を変えます。

小泉さんは「土壌と微生物」に街をたとえて、多様な生物や種が共存しながら発展・進化していくイメージを伝えたのをきっかけに議論はさらに白熱します。渋谷が掲げる「ちがいを ちからに 変える街。」は、渋谷が持つパワーやエネルギーを表現していると林さんが具体的なエピソードとともに意見を述べると、それぞれが渋谷の多様性について独自のアイデアを出し合います。そのなかでもわかりやすい表現だったのは伊藤さんの発言

「渋谷はつねに尖ったものがでてきて、ぎりぎりのところで秩序がたもたれていた。だから中央集権的ではなくて、ファジーでいいと思う。人間の大腸にもいい微生物と悪いやつ、中くらいのが共存されていて最適化はされていない。システムとして進化してきている。渋谷は、役に立つ人しかいなくて、目的があって整然と人が歩いている街ではなくて、全体でカルチャーをつくっていくのが大事」（伊藤さん）

もっともっと皆さんの遠慮なしのアイデアセッションを聞いていたかったのですが、残念ながらタイムオーバー。最後に澤田さんは「選択肢がある街」を創りたい、いろんな人が自由に自分の意思で選択できることが渋谷の要となるはずだ、とまとめました。この4名だからこその熱量を十二分に楽しめる間違いない名セッションでした。