不登校児童・生徒の第三の居場所づくり 〜保護者と考えるメタバースの可能性〜

<登壇>
熊野英一 一般社団法人ビリーバーズ 代表理事
水瀬ゆず 一般社団法人プレプラ 代表理事

 

メタバースを不登校生徒の“居場所”に
あらたな可能性に向けた第一歩

 

小中学生の不登校生徒数は10年連続で増加しており、2022年度は過去最多の29万9,048人にのぼったことを、文部科学省が2023年10月に発表しました。前年度からの増加率も22.1%と過去最大になっています。

不登校の原因はひとりひとりさまざまで非常に複雑なので、ひとつのアイデアで解決するようなものではありません。時代や環境、社会の価値観なども変化していくなか、教育の場における子供たちの選択肢を改めて考える必要性をふまえ、 そのひとつとしてメタバース活用の可能性を示したのが今回のセッションです。
宮下公園のメタバース空間「渋谷区立宮下公園Powered by PARALLEL SITE」に参加者である不登校児童・生徒の保護者が集い、講演とワークショップの二部構成で行われました。

SIWメタバースイベント入場画面 不登校児童・生徒の第三の居場所づくり 〜保護者と考えるメタバースの可能性〜

講演を行なったのは、一般社団法人ビリーバーズの代表理事の熊野さんと一般社団法人プレプラの代表理事の水瀬ゆずさんの2人。

熊野さんは2007年に株式会社子育て支援の創業以来、育児支援に長年関わってきました。2021年には「不登校という社会課題を解決するために日本中に居場所を作る」をテーマに一般社団法人ビリーバーズを設立し、不登校支援を中心に非営利活動に取り組んでいます。熊野さんは、世界と比較して日本の子どもは自己肯定感が極端に低い例などを挙げ、日本の教育も変化しなくてはいけないと語ります。

「2024年4月から日本でも不登校の子どもの『居場所』を拡充するための助成金が出るようになります。日本も徐々に変化してきている。不登校の原因は複合的ですが、本質的な問題は社会的自立の選択肢がなくなること。また勉強は、学校でなくてもできる」

また講演後、参加者の方から「子どもが無気力となることが多く、親としてどうしたらいいか」という質問があり、熊野さんはこのように伝えました。

「『親が何かをしてあげる』という考えを捨てることが一番大事。無気力で何もやりたくないというのは子どもからのサインです。無気力だから何かをしないといけない、と親が思っていると、子どもは一層元気が出なくなるもの。むしろ、それでもいいんだよ、と伝えると気力が湧くものです。気力のスイッチを押すのは本人。親がスイッチを探して押すのはやめたほうがいい。真剣に愛しても深刻にならないのがポイントです」

SIWメタバースイベントワークショップ会場 不登校児童・生徒の第三の居場所づくり 〜保護者と考えるメタバースの可能性〜SIWメタバースイベント関連情報エリア 不登校児童・生徒の第三の居場所づくり 〜保護者と考えるメタバースの可能性〜

つづいては水瀬ゆずさんの講演。水瀬さんは、メタバースの概要について改めてわかりやすく「メタバースとはツールではなく、社会である」「仮想空間であり、新しい社会空間」と、その意義と可能性を解説しました。

「メタバースは、次世代型オンラインコミュニケーションであり、もう一つの現実世界です。オンラインだけど実際に会っている感覚があり、アバターとハンドルネームによって自分のありたい姿・環境で参加でき、顔出しや声出しをせずにコミュニケーションもできる。アバターに手や表情の動きを連動さえることでリアルなコミュニケーションが可能なので、オンラインとリアルの良いとこ取りと言えます」

水瀬さんはこれまでに、広島市で不登校学生の居場所支援プログラムを行い、同様に京都市では1ヶ月間に渡るプログラムも提供してきました。メタバース空間に参加してコミュニケーションをとったり、プログラムに参加することで、自分の興味の再発見や、なにかに対して一歩踏み出すような気持ちの変化といった効果があったと説明します。

2人の講演後、参加者が2つのグループに分かれ、「メタバースを体験してみて感じた可能性や期待」「不登校児童・学生向けメタバース活用アイデア」をテーマに、ワークショップが行われました。メタバース空間で、チャットやエモートを活用しながら活発なアイデアが飛び交いました。

SIWメタバースイベント集合写真 不登校児童・生徒の第三の居場所づくり 〜保護者と考えるメタバースの可能性〜

最後に水瀬さんが「まずはチャレンジをして、共通の仲間意識を持つことに価値があります。今日皆さんが一歩踏み出して新しい可能性にチャレンジしたことが本当に重要です」と、不登校に悩んでいる方々がメタバース空間に参加したこの一歩が非常に重要であると伝えました。

原因が複雑で解決が難しいからこそ、あらゆる可能性を探る必要がある。その意味でメタバースは高いポテンシャルを秘めています。まだまだテクノロジーやシステムは整備されていないからこそ、このセッションのように良い点・改善すべき点を当事者と忌憚なく意見を交わし、場を発展させていくことにも大きな価値があります。

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