Special Agenda
「社会課題をクリエイティブの力で解決へ~THE TOKYO TOILET~」
<SPEAKER>
小林純子
設計事務所ゴンドラ所長
一般社団法人日本トイレ協会会長
佐藤満春
お笑い芸人・名誉トイレ診断士
佐治香奈
日本財団 経営企画広報部 ソーシャルイノベーション推進チーム
金山淳吾
SIWエグゼクティブプロデューサー
一般財団法人渋谷区観光協会 代表理事
誰もが一度は使ってみたいと思う公共トイレに生まれ変わらせるTHE TOKYO TOILETが、どのように街をアップデートしコミュニティ意識を醸成するのか
汚い、臭い、暗くて怖いーー。公共トイレに人々が抱いてきたそのようなネガティブなイメージを一新させる「THE TOKYO TOILET」なるプロジェクトが、いま、渋谷区内で行われています。
これは、安藤忠雄氏、伊東豊雄氏、隈研吾氏、坂茂氏ら16名の世界的な建築家・クリエイターに、区内17箇所の公共トイレをリデザインしてもらうというもの(すでに12箇所が完成。5箇所は2022年にオープン予定)。誰もが快適に使えること、またユニバーサルデザイン(すべてのひとのためのデザイン)の理念を取り入れた仕様・設計であるのはもちろん、清掃やメンテナンスの新しいシステムも取り入れて“いかに綺麗に維持するか”にも工夫を凝らしているといいます。
このセッションでは、プロジェクトに関わる日本財団の佐治香奈さんを進行役に、「THE TOKYO TOILET」参加クリエイターのひとりで、これまで多数のトイレをデザインしてきた小林純子さん、またお笑い芸人であり、“トイレの健康診断”を行なうトイレ診断士の資格を持つ佐藤満春さんが、“公共トイレ”の社会インフラ性、それに関わる諸問題、そして、いかにデザインで社会問題を解決できるのかについて意見を交わしました。
小林さんは、自身がこれまでに設計したトイレの事例を紹介しながら、「トイレを設計する際には、機能とデザインを一緒に考える。機能は身体的なもの、デザインは、使う人がホッとしたり、また来たくなるような、いかに心に働きかけられるかを大切にしている」。また「公共トイレは、実は災害時などに重宝されるもの。そういう意味でも自分の生活のなかで、安全を担保する公共トイレを知っておくことは大切」とも言います。またこういった綺麗なトイレは、観光資源にもなるのではとの意見も。佐藤さんは「トイレは集客性があると言われている。商業施設のトイレが綺麗になると、人が集まりやすくなり、売り上げが上がる。渋谷に関わる人にとっても、綺麗な公共トイレがあること、それを綺麗に維持することは有益であり、このプロジェクトが海外や地方自治体の良いモデルケースになればいい」
佐治さんは「THE TOKYO TOILET」では、実装前と後で利用者の声を集め、フィードバックしていくと話します。「街の魅力が上がったという声も聞こえた」。「渋谷区が掲げるダイバーシティの点でも、今回のトイレでは、車椅子が入れるスペース、LGBTの方も気兼ねなく使えるスペース、人工肛門の方も使える設備なども設けている。アンケートでは、異性の介護者、介助者と行動されている人の悩みなどの声も上がっており、今後反映していきたい」
最後に、社会課題に対して解決に向かっていく気持ちをみんなで共有する「アイデアの短冊」を披露。佐治さんは「価値観をアップデート」。小林さんは「街の頼りになるところ。街に愛される場所」。佐藤さんは「トイレをもっと楽しく」。それぞれ、公共トイレは社会インフラでありながら、プライベートな街の個室でもあると言い、公共のものを自分ごと化し大切にしていくことの重要性、ひいてはそれがコミュニティの魅力や誇りの醸成につながることを強く訴えました。