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情動を都市からデザインし、過ごしやすい環境をつくるには ——「都市環境のデザインを情動から考える」

開催: 9.22(日) 渋谷ヒカリエ 8/COURT

“多様な未来を考える12日間”「ソーシャルイノベーションウィーク渋谷」
https://social-innovation-week-shibuya.jp/2019/

「都市環境のデザインを情動から考える」
2019年9月22日(日)14:30〜15:30
渋谷ヒカリエ 8/COURT
<登壇>
慶応義塾大学 環境情報学部 准教授
JSTさきがけ研究者
仲谷正史
ヒビノアークス株式会社所属、サウンドディレクター、サウンドデザイナー
高木 朋
東急株式会社 渋谷ストリーム運営担当
飯島隆人
日建設計 ソリューショングループストラジスト
安田啓紀
日建設計 設計部門 ダイレクター アーキテクト
坂本隆之
日建設計 都市部門 都市開発グループ 都市開発部アソシエイト
辻本 顕

2018年に渋谷側沿いに完成した「渋谷ストリーム」、またその周辺の遊歩道「渋谷リバーストリート」では、新しい公共空間のあり方を模索するさまざまな取り組みが行われています。
現在、渋谷ストリーム主催のもと、この遊歩道沿いに、誰かが座ると音が流れて光る、インタラクティブなベンチ&テーブル「Public jukebox(パブリック ジュークボックス)」が設置されています。(10月22日まで)



この作品の制作を手がけ、また公共空間デザインを仕事とする日建設計の安田啓紀さんは、
「この渋谷リバーストリートに求められているのは、"楽しみながら移動する"、“寄り道したくなる”、“自分らしく思い思いの時間を過ごせる”空間。
 そのような“何となく良い”と感じる状況を日常においてデザインすることは可能か、都市環境(公共的な場所)のなかで、情動や情動を感じられることの意義について、考えることから作品作りを始めた」と言います。
つまり、この体験型の作品は“「情動」はどうデザインできるのか”という視点から作られている、と。

そして、触覚の研究者で、またASMR(自発的に心地よい感覚をもたらす生体反応)研究の第一人者である仲谷正史さん、サウンドディレクターの高木朋さんとコラボレーションし、ワークショップを行いながら作品制作を進めたそう。



仲谷さんは、自身の研究やASMRの例を紹介しながら、
「普段はノイズに思っていた物音、騒音に感じていたものが、心地よいと思えるときもある。また今日、聴こえる音は心地よいのに、明日になると違って感じることもある。情動は、環境にも影響を受けていると言えます。そのことに気づくことは、都市環境のデザインの中でも大事になってくる」と語ります。



そして、高木さんは、仲谷さんらと“渋谷川に潜んでいる音を見つける”ワークショップを行い、側道沿いの用水路、室外機、橋の鉄の手すりを叩く音などより音を収集。「Public jukebox」のベンチは3人がけですが、座る人数に合わせてその音が変化して流れる仕組みにしたと話します。



東急株式会社の飯島さんは、「お子様や海外の方を中心に多くの方に楽しんでいただけている」と話します。
1人がインスタレーションを楽しむ姿を見て、他の方にも興味が伝染していく様子が1日に何度も見られるようです。
「通行される方がもしインスタレーションに気が付かなくても、無意識に音や光の変化を身体が感じて、少しでも癒しになっていれば嬉しいです」

日建設計の辻本さんは、景色という言葉は、かつて「気色」と表現され、人の心の動きや自然の移ろいを示すものだったと言います。
「仲谷さんのお話のとおり、目に見える景色だけでなく、気持ちや情動を含めた、気色をデザインすることが大切。約50年前に都市計画法の枠組みができましたが、これは経済成長、公害問題が背景にあり、例えば風鈴の音など、公害レベルではない音も“騒音”として減らすことが目指されています。
 情動をインスパイアするような音、景色に触れ、人の閉ざされた感覚を開くことで、都市空間での“すごし方”は、もっと選択肢が広がると思います」

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