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予定調和と既成概念を壊すアートは“普通じゃない”から生まれる ——「"普通じゃない"って可能性論」【SIW2019レポート】

開催:

“多様な未来を考える12日間”「ソーシャルイノベーションウィーク渋谷」
https://social-innovation-week-shibuya.jp/2019/

DIVE DIVERSITY SESSION
「"普通じゃない"って可能性論」

2019年9月19日(木) 13:15~14:00
渋谷ヒカリエ 8/COURT
<登壇>
株式会社ヘラルボニー 代表取締役社長
松田崇弥

株式会社ヘラルボニーの代表取締役社長を務める松田崇弥さん、同社副社長の松田文登さんは双子の兄弟(崇弥さんが弟で、文登さんが兄)。同社は2018年7月に「異彩を、放て」をミッションに設立。知的障がいのあるアーティストの作品をプロダクトに落とし込むブランド「MUKU」や建設現場にある仮囲いにアートを展示する「全国仮囲いプロジェクト」を手掛け、フォーブス誌が選ぶ「日本を変える30歳未満の30人」に兄弟で選ばれるなど、いま社会福祉事業で高い注目を集めています。



このセッションでは、松田崇弥さんが登壇。この事業を始めたきっかけとなり、本セッションを通じて避けることができない要素が、4つ年上の兄の存在だと語ります。

「僕らは3人兄弟で、4つ上の自閉症の兄がいました。幼少期から周りに『兄の分まで頑張って幸せになれ』とか『お前が兄を守っていくんだ』というようなことを言われつづけていました。
子ども心に“兄がかわいそうな存在”として扱われていることに違和感がありました。普通に笑って、泣いて、生きているのに……。
中学時代の思春期には兄とぶつかった時期があり、高校は寮ぐらしであまり会えず、大学へ行き、僕は就職しました。そんなときに母親から地元・岩手にある『るんびにい美術館』に行かないかって誘われたんです」



るんびにい美術館では障がいのあるアーティストの作品を展示しています。表現豊かな多彩な作品に触れ、松田さんは衝撃を受けます。

「障がいのある方のアート作品には、予定調和やバイアスを破壊するパワーがあるんです。でも、地元の友人に聞いても誰もこの美術館の存在を知らないんです。
こういった作品を社会に広めたい、と強く思いました。もとから兄の存在もあり、障がい者と関わる仕事をしたいと思っていましたが、るんびにい美術館での体験が大きな契機になりました」

社名にある“ヘラルボニー”は、4つ上の兄が7歳の頃に自由帳に書いていた、意味はわからないが魅力的な言葉からとっているそう。そこには、崇弥さん、文登さんの熱い思いが詰まっています。



同社設立後、知的障がいのある方の作品を通して企業や自治体とタイアップする取り組みを数多く行っています。その中でもアパレル企業のTOMORROWLANDとのコラボ商品は、大手ファッションECサイトであるZOZOTOWNで売上1位を記録。確かな手応えを感じた、と崇弥さんは言います。

「販売しているときは、障がい者が関わっていることを一切伏せていました。それにも関わらず、売上が1位になったので、商業デザインとしても通用するという自信が持てました。
いまはさまざまな企業やメーカーとタイアップした商品をブランド『MUKU』から発売しています。
NPOでは我々のような団体はありますが、ちゃんとアーティストに還元できる仕組みがほしかったから、株式会社にこだわりました」

さらに現在では、前述の「全国仮囲いプロジェクト」の他、ワークショップ「未来言語」なども展開する株式会社ヘラルボニー。2期目は、海外展開を目指します。

「“普通じゃない”ってことは可能性だと思っています。日本で108万人、世界中で2億人いると言われる知的障がいのある方々の大きな可能性をもっと広げていきたいです」

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