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「ダイバーシティ」は“目的”ではなく“結果”— インタラクティブセッション「ダイバーシティ&インクルージョンって何?」【SIW2019レポート】

開催: 9.16(月) 渋谷ヒカリエ 8/COURT

“多様な未来を考える12日間”「ソーシャルイノベーションウィーク渋谷」
https://social-innovation-week-shibuya.jp/2019/

インタラクティブセッション
「ダイバーシティ&インクルージョンって何?」

2019年9月15日(日)19:15〜21:00
渋谷ヒカリエ 8/COURT
<登壇>
トランスジェンダー活動家/株式会社ニューキャンバス代表取締役
杉山文野
株式会社アドレス 代表取締役社長/一般社団法人シェアリングエコノミー協会 理事
佐別当隆志
東京大学先端科学技術研究センター 地域協創リビングラボ 特任助教
日本学術会議 上席学術調査員
近藤早映
広告クリエーター
クドウナオヤ
<モデレーター>
パラリンピック元選手
大日方邦子

16日最後のトークセッションを飾るのは、5人の登壇者たち。
トランスジェンダーであり、フェンシング元女子日本代表の杉山文野さん、シェアリングエコノミー協会常任理事の佐別当隆志さん、子育てをしながら研究者として生きる近藤早映さん、広告クリエイターのクドウナオヤさん。モデレーターは、冬季パラリンピックアルペンスキー選手して活躍し、選手引退後は、教育やダイバーシティ推進にかかわる多分野で活動している大日方邦子さんです。

ダイバーシティについて最近思うことというテーマに対し、杉山さんは課題を投げかけます。



杉山「誰もが自分の人生の主役だから、『こうやりたい』という人生を応援できるような環境になれば一番良いですよね。結局、多様性って誰の話なのかと考えると、特別な誰かのためにあるんじゃない。明日の自分や大切な人がそうなる可能性もあるから、みんなが考えていく必要があるんです」

クドウ「人と違うほうがかっこいいと思ってきたので、個人的にはマジョリティでありたいという考え方のほうが共感できなくて。 クリエイティブをつくる上では、差異が価値。人と違う価値観や意見をもっていることが良い結果を生み出すことが多いですから」



異なる考え方を持つ者が理解し合うという難しさに対し、大日方さんは近藤さんが提唱する「ソーシャルマドラー」という言葉を紹介します。
近藤「水と油のように違うものをかき混ぜても、時間が経つともとのように分離していきます。界面活性剤のようなものを仕掛けて、何かを生み出せるようなものに昇華していく。そうして社会から湧き上がる問題を抽出することを、ソーシャルマドラーと呼んでいます」

佐別当「地方や都心だけでなく、若者も老人も男も女も、全部の考え方が混ざらないと社会は発展しないんです。新しい取り組みを生み出すためには、色々な視点が必要不可欠で。その場合の界面活性剤となるのは、地方と都心のものさしを整えて、翻訳してくれるような人ですね」



話題は、「ダイバーシティを実現すること自体が目的になってはいけない」という点に終着します。何かをする時にいろいろな視点があったほうがいい。いろいろな人がいるからこそ、結果として生まれてくるものがダイバーシティになる。

渋谷区の未来像は、「ちがいを ちからに 変える街」です。ゴミ拾い活動で渋谷区長ともともと交流のあった杉山さんは、それが始めは特に世の中を変えてやるという心意気で始まったのではないと語ります。
「渋谷区長は、親しい人が困っているから何かできることをやってみようと思っただけ。パートナーシップ制度もそのようにして生まれたんです。だから、もっと肩の力を抜いて、いいなと思ったことを積み重ねていくことがダイバーシティの第一歩なんじゃないかと思います」



“ダイバーシティ”や“インクルージョン”という言葉が広く使われるようになってきたいまだからこそ、ふとあらためてその意味を自分で問い直してみることの大切さを感じるセッションとなりました。

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