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シブヤグリーンシフトなまちづくり

11.6 (水)

12:00 - 12:45

SHIBUYA QWS

  • アーカイブ公開あり

“グレーな街渋谷”から”緑の街渋谷”へ。都市と緑の新しい共生を実現するには?

 

<登壇>
栄藤稔
大阪大学 先導的学際研究機構・教授
松田哲
ダイキン工業株式会社 空調営業本部 副本部長
今佐和子
国土交通省都市環境課 課長補佐
辻愛沙子
株式会社arca CEO / Creative Director
金山淳吾
SIW エグゼクティブプロデューサー / 渋谷区観光協会 代表理事

 

『シブヤグリーンシフトなまちづくり』では、大阪大学の栄藤稔さん、ダイキン工業の松田哲さん、国土交通省の今佐和子さん、株式会社arcaの辻愛沙子さんが登壇。2024年の観測史上最高気温の記録など、深刻化する気候変動の課題に対し、渋谷から始まる東京全体を冷やすプロジェクト構想について議論を交わしました。

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トークセッションでは、まず「”グレーな街渋谷”から”緑の街渋谷”にシフトするためのアイデアは?」という問いかけに対し、各登壇者がそれぞれの視点から意見を述べていきました。

渋谷区出身で現在も渋谷で働く辻さんは、都市における緑化についてこう語ります。

「都市の中の緑化というと、景木を増やして緑道を歩くというイメージが多いと思うが、都市と緑の共存のあり方はそれだけではない。街を歩いていて花の香りがしたり、花の種類によって季節が感じられたり、木陰になるような緑があってもいい。また、エアコンの室外機の周りの緑のように目視しづらい緑も含めて、季節を感じられる文化としての緑と、実際に気温を下げていける“涼”としての緑、それぞれを増やしていく必要がある」

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金山の「東京はシンガポールのような緑化先進の街にシフトしていけるのか」という問いに対し、今さんは「シンガポールほど規模の大きな緑地を東京につくるのは難しい。街の中に点在する緑が増えていく方向でないと現実的ではない」と指摘。

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一方、栄藤さんは東京の現状と可能性についてこう分析します。

「経済合理性が東京をこうしてしまった。でも幸いなことに東京には代々木公園のような財産がある。一気に全体を変えることは難しいが、一つでも二つでも少しずつ変えていけば、東京は変わっていける」

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都市部の緑化について、松田さんは、東京ではオフィスビルなど働く場所で緑を感じる機会が少ないと指摘。特にビルの屋上では気温が40度以上になることも当たり前で、その熱によってエアコンの消費電力も上昇している現状を説明しました。その対策として、ビルの周りに緑を配置することで日陰を作り、さらに緑を育てるための水が気温低下にも寄与し、省エネと緑化を同時に実現できると提案しました。

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一方、辻さんはクリエイティブの視点からこう提案します。

「クリエイティブの世界は積み上げで何かを作っていくだけではない。こういうものがあったらいいというコンセプトを先に立て、そこからバックキャストで実現への戦略を考えていく。この手法は都市の緑化においても有効ではないか」

また、金山の「質の良い緑化のあり方、都市緑化のあり方についてのアイデアは?」という質問に対し、松田さんは「人の暮らしに密接に結びつく、自分事になっていくことが質の良い緑化だ」と語りました。

一方、今さんは緑化の質を評価する3つの観点について「緑化の質は、気候変動対策、生物多様性、そしてウェルビーイング。人々の暮らしにどれくらいいい影響を与えられるか、という観点から測ることができる」と説明しました。

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これを受けて金山は、公共空間における緑化の新しいあり方として「エディブル(食用可能)な緑地」を提案。「公共空間の緑は誰のものかわかりにくい現状がある。例えば、イチョウ並木の銀杏は路上に落ちて無駄になっているが、これを日本に暮らす全ての人が収穫できる資源として活用すれば、緑化の質を高めていけるんじゃないか?」と語りました。

このように専門分野や立場は異なっても、都市における緑化の質的向上が未来の渋谷に不可欠であるという認識が共有されました。このセッションで示された創造的なアイデアを実践していくことで、渋谷から始まる新しい都市緑化のモデルが広がっていくはずです。