辛いけど、一番楽しい。音楽の未来を作り出すゼロ地点の現在——浅川真次/田村優/☆Taku Takahashi

「音楽文化の未来図」
11月12日(木) 15:30-16:30
@SHIBUYA QWS

<登壇>
(株)アーティマージュ代表取締役社長 / 一般社団法人日本音楽制作者連盟副理事長
浅川真次
株式会社インクストゥエンター 代表取締役/一般社団法人音楽制作者連盟理事
田村優
DJ/プロデューサー
☆Taku Takahashi

CD、ダウンロード、ストリーミングと音楽を聴くフォーマットが変化し、「音楽が売れない時代」「音楽でマネタイズすることの難しさ」が話題となり久しいですが、2020年は新型コロナウイルスの影響でライブが開催できないなど、音楽業界にさらなる激震が走りました。

このような時代の変化で、音楽文化の未来はどうなるのか? 長年、日本の音楽業界の第一線を走り続けてきた3名によるトークセッションでは、明るい未来が提示されました。

SAI0733 辛いけど、一番楽しい。音楽の未来を作り出すゼロ地点の現在——浅川真次/田村優/☆Taku Takahashi

浅川真次さん、田村 優さん、☆Taku Takahashiさんの3名は、アーティストとして、または音楽カルチャーを牽引する裏方として、長年にわたり日本の音楽カルチャーを盛り上げるために東奔西走してきました。
いま音楽業界をとりまく変化に対して、浅川さんは悲観的ではなくポジティブな考えを披露します。

「ライブ配信でいうと、確かにマネタイズは難しくなってきた。でも、リスナーとのタッチポイントは増えたと思っている。チケットを入手できなかった人が、ディレイ配信で鑑賞できたり、小さいお子さんがいる方、遠方で物理的に来場できない方、そういった方々にもライブを楽しんでもらえる。アーティスト側もより手軽にライブを配信すればいいと思っている。ツアーは作り込んで実施するし、セットリストでもあまり冒険はできないけど、作ったばかりの新曲だけをライブ配信するとか、これまでやってない取り組みやプレミアムな配信・発信をしていくことに可能性を感じている」

SAI0753 辛いけど、一番楽しい。音楽の未来を作り出すゼロ地点の現在——浅川真次/田村優/☆Taku Takahashi

まだまだ確実にマネタイズできるポイントは確立できていないものの、この危機によってこれまで思いつかなかったアイデアがどんどんと生まれていると指摘します。つづいて、田村さんもデジタルコンテンツのポテンシャルについて試行錯誤していると語ります。

「オンラインチケット、投げ銭、ギフティングなど様々な手法があって、色々と試しています。デジタルコンテンツだと、オリジナルのアイコン、アバター、LINEスタンプなどが代表的ですが、カレンダーなんかでもいいと思っていて、アーティストやプラットフォーマーの方々と協力してマネタイズのポイントを探しています」

SAI0788 辛いけど、一番楽しい。音楽の未来を作り出すゼロ地点の現在——浅川真次/田村優/☆Taku Takahashi

2人の意見を受けて、☆Taku Takahashiさんは「本当に厳しい時代」と前提しながら、

「これまでのアーティスト生活の中で、今が一番楽しい。本当に厳しい時代なんですけど、変化があるなかで新しいことを生み出すチャンスなんですよね。そのチャンスをどう生み出すかという楽しさがある」

音楽でのマネタイズポイントの明確な手法はこれから生み出される、未来は明るい、といい意見は共通しながらも☆Takuさんは「では、いい音楽と稼ぐ音楽に違いはないか?」とお題を出します。

SAI0796 辛いけど、一番楽しい。音楽の未来を作り出すゼロ地点の現在——浅川真次/田村優/☆Taku Takahashi

浅川「最近は以前より一致してきた印象がある。特に最近のアーティストはいい。テクノロジーの進化とともに、多くの人に聴いてもらえる環境ができてきた。一方でユーザーの耳も肥えてきているんですよね。昔の曲も最新の曲も手軽に聴けるようになってきているのは大きいと思います」

☆Taku Takahashiさんはその意見に賛同しながらも、「まだ必ずしも一致せず、もっといい音楽が稼ぐ時代にしていかなくてはいけない」と警鐘を鳴らします。

浅川「ざっくりと計算したことがあるんですが、1枚3000円のアルバムだと1200円くらいの利益が出る。10曲が収録されていると、1曲あたり120円くらいの計算になります。サブスクで聴かれると、1プレイで0.8〜1円。長く聴いてもらえると、どこかでCDを買うより利益が上がる分岐点があると考えています」

定量的な数字を出しながらの説明に、☆Taku Takahashiさんも田村さんもひとつの指標として説得力を感じ、ヒントともなりうると声を上げました。最後に未来や文化の形成については、田村さんが日本独自のコンテンツに可能性があることを示唆しました。

SAI0748 辛いけど、一番楽しい。音楽の未来を作り出すゼロ地点の現在——浅川真次/田村優/☆Taku Takahashi

「いろんなプラットフォーマーが台頭しているなかで、マーケットを世界に広げていかなくてはいけない。ボカロと同様にVtuberが世界でも人気が高い。YouTubeのSuper Chat(投げ銭)の世界の上位10位のうち7人が日本のVTuberなんです。プラットフォームも増えた分だけ個性や特性があるので、それを見極めた上でいいコンテンツを発信できれば、道は切り開けるんじゃないでしょうか」

「厳しく辛い時代だけど、次のスタンダードを作り出すチャンス」「音楽でマネタイズするのは難しいが、音楽は世界中の人に聴いてもらえる環境が整っている」とポジティブに捉えた発言が多かったのが、非常に印象的だったこのセッション。まだ道しるべはありませんが、答えはひとつではなく、答えを自ら作り出すこともできる。そんな時代に日本の音楽シーンがどのようなアクションを起こすのか、注目をしていきましょう。

SAI0852 辛いけど、一番楽しい。音楽の未来を作り出すゼロ地点の現在——浅川真次/田村優/☆Taku Takahashi

CONTACT

SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA 実行委員会

※お名前、電話番号をお書き添えのうえ、
内容をできる限り具体的にご記入願います。