アートの価値はどこにある? 個人それぞれの価値感を肯定できる文化へ——松園詩織/山峰潤也

「価値の感じ方」
11月12日(木) 12:30-13:30
@オンライン配信

<登壇>
株式会社ANDART 代表取締役社長
松園詩織
東京アートアクセラレーション共同代表/ANB Tokyoディレクター
山峰潤也

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オークションで百億円を超える落札額となることも珍しくないアート作品。その浮世離れした金額はたびたび世の中を賑わせますが、実際にアートの価値はどこにあるのでしょうか? そんな疑問を抱いたことがある方も少なくないでしょう。一方で、「アートの価値がわからない」というレッテルを貼られることも嫌なので、一般の方々では真正面からアートの価値について議論する機会というのも実は多くないはず。

今回のセッション「価値の感じ方」では、誰もが一度は疑問をもつ「アートの価値」について多様な意見が交わされました。

スピーカーは、一口1万円から共同購入しアート作品のオーナーになれるという画期的なシェアリングエコノミーサービスを展開している株式会社ANDARTの代表取締役である松園詩織さんと、東京アートアクセラレーション共同代表/ANB Tokyoディレクターである山峰潤也さん。そして、SIWプロデューサー:金山淳吾の3名。

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本セッションでは、「人とアートの距離」「改めて価値観を考える」「新しい発見で才能の発掘を」「アートの自分ごと化」の4つのテーマで議論が進みましたが、本題である「価値」の核心に迫ったのは、金山のこんな問いかけ。

「西洋絵画の価値については理解ができる部分はありますが、ハードルが高い。歴史や当時の文化や背景を知らなくてはいけないし、技法や美術全般のリテラシーも必要になる。でも、現代アートに関しては、受け手によって作品の印象が異なるということが多々あります。さらに言えば、その時のコンディションによってもその印象は変わる。お二人は“アートの価値”についてどのように考えていますか?」

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松園さんは、アートの価値観は多様的で、個人によって違うのが当たり前だと述べます。
「ある人にとっては無価値だけど、世界の誰かにとってはいくら投じてでも欲しいもの。価値の幅が個人によってこんなに大きいのはアートしかないんですよね。でも、アートに関しては、自己判断しちゃいけない強迫観念みたいなものがあるのも確か。本当は、赤が好き、青が好き、のような感覚でもっと素直でいいと思っています。知識や教養がつくとそれに引っ張られてしまう可能性がありますが、アートはもっとパーソナルな存在だと考えています」

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またそれを受けた山峰さんは、「日本は世界と比較しても美術館への来場者が多いが、有名なアーティストの展覧会に集中している」という指摘をし、日本固有のアートの考え方に対してこう言います。
「“いいものはいい”という価値観から脱却しなくてはいけません。誰か(有識者や専門家)がいいと言っているからいいのではなくて、自分にとっていいものを探す。有名美術館に展示されているからいいんだよ、という考え方は入り口としてはあり。でも有名絵画をたくさん覚えることにより、自分に響くものに出会えたら、好奇心が生まれきて、興味が広がっていくと思います」

アートは、市場の評価やアカデミズムの権威などが強いため、個人の好きの延長線上におくのが難しい雰囲気があるというトピックは、多くの視聴者にも納得のいく意見だったのではないでしょうか。その上で3名は、もっとアートでパーソナルな体験をしてほしい、と後押しをします。

山峰「日本では美術が生涯学習や教育に位置づけられているんですよね。アートが学芸員も専門家として正しいことを言わねば、と思うし、美術館が言っていることは正しいことだと刷り込まれてしまう。そういった文化が、アートに対して『正しいことを言わなくちゃいけない』という雰囲気を醸成した一因ではないかと思っています。とりわけ現代美術は、“権威的な正しいことを乗り越えていく”ことが一つの出発点なので、真逆になってしまっている」

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山峰さんは、広義と狭義のアートがある、とした上で、様々なレンジの中でも、“パーソナルなコミュニケーションで考えるアート”に答えはなく、自由に受け取っていいと発言します。松園さんは山峰さんの意見に賛同しながら、「アートに上下はなく、好きなものと一緒に暮らす感覚で、部屋にひとつアートを飾るカルチャーを広げていきたい」と語りました。

アートはもっと自由に捉えていい。個人の好き嫌いで問題ない。というメッセージは、我々の背中の後押しをしてくれているようでした。アートに触れるのは好きだけど、敷居が高いイメージがあり、胸を張って語れない、発言できない。好きなものも好きと言える文化が形成され始めた時、日本のアート界は確実な一歩を進むのではないでしょうか。

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