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心理的に安全な環境をつくるための“マイノリティへの想像力”——「“生理”と女性の社会進出」

開催: 9.21(土) 渋谷ヒカリエ 8/COURT

“多様な未来を考える12日間”「ソーシャルイノベーションウィーク渋谷」
https://social-innovation-week-shibuya.jp/2019/

DIVE DIVERSITY SESSION
「“生理”と女性の社会進出」

2019年9月21日(土)13:15〜14:00
渋谷ヒカリエ 8/COURT
<登壇>
株式会社ウツワ代表取締役
ハヤカワ五味

今回のセッションの登壇者は大学1年生からアパレル会社を経営している若手経営者のハヤカワ五味さん。今年の5月には生理用品のセレクトショップを展開する新プロジェクト「illuminate」を立ち上げています。
「“生理”と女性の社会進出」というテーマながらも、多くの男性が来場していたことも印象的でした。



女性が社会に進出するためには、男女間の不平等の解決が必要です。ハヤカワさんは「ジェンダー平等」についてエモーショナルな側面ではなく、経済合理性を考慮して課題に取り組んでいます。

「マッキンゼー・アンド・カンパニーの調査では、完全な男女平等が達成されれば、世界のGDPは2025年までに26%も増えると予測しています。また、世界経済フォーラムによると、ジェンダー平等度の高い国ほど一人あたりのGDPが高いという傾向が出ているんです。日本はジェンダー平等の質も悪く、GDPも伸び悩んでいるので、これを機に真剣に取り組むべきだと思います」

しかし、平等といっても、男性と女性を同じとみなすのは無理がある、とハヤカワさんは言います。

「男女で身体のしくみや筋肉の量も違いますし、女性には生理も出産もあります。私が伝えたいのは、『平等』にも2種類あるということです。それが『形式的平等』と『実質的平等』。
 形式的平等は、たとえば投票権のように、それぞれがどんな状況であっても等しく機会が与えられる平等。
 一方で実質的平等は、個人のポテンシャルにあわせて不平等をなくしていく。たとえば、教育の均等のために、お金がない学生には奨学金を与えたりしますよね」



ジェンダー平等というテーマで意見の対立が起きている理由は、形式的平等と実質的平等を混同して考えているからであり、ジェンダー平等は実質的平等の視点がより重要だとハヤカワさんは指摘します。
その上で、ハヤカワさんが生理について課題を抱き、取り組みを進めている理由をこう語ります。

「最近、タバコ休憩(をする人と非喫煙者を比較して不公平だという)問題が取り沙汰されていますが、生理用品を買いに行く女性のなかには、近くのコンビニだと会社の人に見つかりそうだからという理由で、わざわざ遠くのコンビニまで行く人もいます。『それってタバコ休憩よりも時間のロスになっていないか?』と考えたんです。
 また、月2〜3回休む女性の方いますよね。風邪だと伝えられていても、実際は生理痛だったりする。それって事前に相談されていたらフォローできたかもしれず、これも解決するべき問題だと感じます」

生理であれ産休であれ、早期に相談があれば対策を立てやすくなるはずではありますが、しかし最近ではハラスメントが問題になることも多く、簡単に解決できるわけではなさそう。

「セクハラは定義が漠然としていますし、生理や出産について男性から話しづらいですよね。だから、すべての人が悩みを話“す”必要はなく、話“せる”環境の整備が重要です。
 たとえばLGBTQについてグループで取り組みたいときも、カミングアウトさせるのではなくて、カミングアウトしやすい環境をつくるべき。“Must”ではなく、“Can”が大切。話させることは強要になりますが、話せる環境は心理的安全性があります」



心理的安全性とは、「こんな発言をしたら睨まれる、バカにされる、といった不安を持たず、本来の自分を安心してさらけ出し、受け入れられる雰囲気」のこと。心理的安全性を与えるためには「知識」「想像」「表明」が重要だと語ります。

「『想像』を例に挙げると、LGBTQの方の割合はおよそ人口の8%、発達障害は10%弱いるといわれています。100人いれば約10人がマイノリティということです。『自分の周りには性的マイノリティはいない』っていう人が私の友達にもいますが、『いやいや、いるぞ。お前の友達で3人くらいいるぞ』と。だけど、本人は自分の周りにはいないと思っているわけですね。私たちはもっと想像力を働かせるべきです」



「生理と女性の社会進出」というテーマから「マイノリティへの想像力」という話題にまで広がった今回のセッション。
最後は「illuminate」のコンセプトを紹介し、まずは会場にいる人たちから“知って”、“考えて”、周りを巻き込んでほしいと伝えました。

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