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スポーツは他業種の視点の“交差点”になり得る —— Meet-Up「街とスポーツのミライ」【SIW2019レポート】

開催: 9.19(木) 渋谷ヒカリエ 8/COURT

“多様な未来を考える12日間”「ソーシャルイノベーションウィーク渋谷」
https://social-innovation-week-shibuya.jp/2019/

DIVE DIVERSITY SESSION
Meet-Up「街とスポーツのミライ」

2019年9月19日(木)19:15〜21:00
渋谷ヒカリエ 8/COURT
<登壇>
株式会社ミクシィ スポーツ事業部 部長
石井宏司
東京フットボールクラブ株式会社 代表取締役社長
大金直樹
プロバスケットボール選手 京都ハンナリーズ所属
岡田優介
スポーツ庁 参事官(民間スポーツ担当)付 参事官補佐
忰田康征

街とスポーツの関わり方を、ここ渋谷を起点に考えるセッション。ファシリテーターを務めた石井さんは冒頭でまず、渋谷の二面性を指摘。“住む、楽しむ”といったトレンド発信地としての渋谷と、“働く、生み出す”というビジネス拠点としての渋谷です。



前半はトレンド発信地としての渋谷の側面にフォーカスして進められます。

FC東京を運営する東京フットボールクラブ株式会社 代表取締役社長の大金さんは、チームのホームタウン活動を紹介。地元と触れ合う機会の数はJリーグチームのなかで一番の自負があるというFC東京、サッカースクールではなんとおよそ4,000人ものスクール生を預かっているのだそう。「チームの次のステップは、文化をつくっていくこと」と語ります。



地域のこどもたちとスポーツといえば、渋谷を含む都内の公園ではボール遊びが禁止になっていることも気になります。

バスケットボール選手の岡田さんは懐かしそうに「こどもの頃、家の近所でドリブルしていて、うるさいと近所の人に怒られたりしたものです」と笑います。



「でもそういう少年達はいまでも東京にたくさんいるでしょうね。彼らには存分にバスケをやらせてあげる環境を整えてあげてほしいです」



スポーツ庁の忰田さんからは熱のこもった意見が。
「人に迷惑をかけるなと言われて育って、都会の暮らしでは感性が理性を超えることがなかなかない。人の感情的な表現がどんどん足りなくなっているなかで、スポーツは重要なエンタメ。スポーツ観戦で感情を揺さぶられて、たとえばスクランブル交差点で他人とそれを共有するようなことがほんとうは人間的な姿だと思うんです」と言い、またプレイヤーにとっての場所不足については具体的な光明と言えるアイデアも。
「スポーツスペースのシェアリングエコノミーという事業をスポーツ庁でも推進しています。スポーツ施設でなくても、オフィスなど空きスペースで球技ができるスペースをシェアできるプラットフォームが作れれば、たとえば公園以外で もバスケはできるはず」

石井「都会だからこそ、困っていることをスポーツで解決できる未来が来たらいいですね」

忰田「同じ時間に同じ場所に集って、効率化主義のさなかにあえて“予測のできないこと”= スポーツ(観戦)に興じることは重要です」

この忰田さんの指摘は、続いての、ビジネス観点での議題でも共通して意義あるものとなっていきます。
後半は“ビジネス拠点”としての街の側面から見る、スポーツとの関係について考えます。



大金さんは、スポーツに関わる企業のスタンスはこの20年で大きく変わってきている、と語ります。
「実業団チームと違い、プロ化、クラブチーム化がされているスポーツでは、企業色は直接的には見えにくくなっている。チームから見れば企業に対してどうリターンを返していくかが重要になっているとも言えるが、企業側も社内の士気向上や一体感づくりのためにチームの存在を活用したりと、広告を出すだけではない、スポーツチームへのあたらしいアプローチが出てきています」



岡田「企業側から見ても、自社のメッセージや理念をスポーツチームに重ねることができると思います。そしてファンも、チームの理念や選手の発言に、自身の感覚を重ねることができます」

忰田さんは「多くの人数を同じ場所に、同じコンテンツなのに年に何度も繰り返し集められるというのは、マーケティングの場としてはとても貴重」と語ります。 「企業はもっとスポーツの価値に気づき活用すべき。スポーツを通して企業同士が繋がることもできるはず」



石井さんはそれに呼応して「イタリアという国を見ると、“イタリア”というもの自体がブランド価値として産業化しているように思える。そのように渋谷全体がひとつの“渋谷産業”として、各職種の協業を模索していけるといいのでは」と提案。

大金さんは「各企業の単位ではそれぞれの受け持つ領域は小さくても、各業種とスポーツの“掛け算”をするように産業を大きくしていくことができれば」と期待を膨らませます。



「いろんな産業の視点がごった煮のようになっていく“交差点”の役割を、スポーツが担っていければいいですね」と石井さんはまとめます。
まさに渋谷の象徴であるスクランブル交差点の様子が、聴衆の皆さんの脳裏に浮かんだところでトークセッションは終了。
渋谷の街とスポーツの関わり方の未来が、うっすらと像を結んだように思えました。

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