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再開発が進むいまこそ注目したい、渋谷の街に“暮らす”人の営み ——「大都市の公共空間の可能性」【SIW2019レポート】

開催: 9.20(金) 渋谷ヒカリエ 8/COURT

“多様な未来を考える12日間”「ソーシャルイノベーションウィーク渋谷」
https://social-innovation-week-shibuya.jp/2019/

DIVE DIVERSITY SESSION
「大都市の公共空間の可能性」

2019年9月20日(金)12:00〜13:00
渋谷ヒカリエ 8/COURT
<登壇>
東京大学 先端科学技術研究センター助教
一般社団法人ソトノバ共同代表理事・編集長
泉山塁威
渋谷道玄坂青年会 副会長
渋谷道玄坂商店街振興組合理事
大西陽介
東急株式会社 渋谷開発事業部課長
宇留間範昭
リージョンワークス合同会社 代表社員
後藤太一
渋谷再開発協会 常務理事
横山和理

このトークセッションでは、研究者、開発者、デベロッパー、また渋谷の街に暮らす当事者を交えて、主に「渋谷における公共空間の利活用と可能性」について、議論が交わされました。



泉山さんは、公共空間の研究者であり「ソトノバ」というウェブマガジンの発行人。
トークセッション当日、道路の路上駐車帯を小さな公園のように、憩いの場に変える「パーキング・デー」を実施しました。これは、サンフランシスコで2005年に始まったもので、パーキング(路上駐車場)をパーク(公園)のように使ってみようとする世界的ムーブメント。
「渋谷は、道路中心にできています。その道路空間をいかに効果的にできるかも、これからの課題。また、そのため、こうした社会実験でデータを収集していくことが大切」



大西さんは、地元商店街の組合理事、また渋谷の生活者として登壇。
「企業とともに街づくりイベントも実施していますが、大きな取り組みとして紹介したいのは『渋谷盆踊り』。ハロウィンの際、人が来すぎることで路上が解放されましたが、イベントのためにストリートを使うことが大切。そのなかで『渋谷盆踊り』では、渋谷には、そこ暮らす人の営みがあることをポジティブに発信できた。渋谷の風物詩にしていきたいですね」



宇留間さんは、「渋谷ヒカリエ」の立ち上げ担当者。その運営から学んだことを話しました。そのうえで、
「われわれは渋谷開発にも携わっており、掲げているキーワードは“エンタテイメントシティ渋谷”。建物内だけでなく、(建物前のスペースの)半公共的な空間を活用して渋谷の強みを活かす取り組みも積極的に行なっています。施設内イベントスペースはいわゆるB to Bのものが多いのは事実ですが、ストリート、公共空間を連動させるとB to Cにもなって一気に情報発信度が増すことになる。
 今後も街全体をプレゼンテーションと捉えられるような施策の実現や、新しくできる渋谷駅東口の地下広場のような公共空間の活用によってエリアの個性を引き出すなど、渋谷の可能性を開いていきたい」と話しました。



イノベーションを起点に渋谷の地域経済循環をめざす「渋谷計画2040」のビジョン制作にも携わってきた後藤さんは、それを受けて、
「WALKABILITY(歩きやすさ)という概念が、不動産市場価格の90パーセントに関係していると言われます。渋谷も歩きやすさを改良すると良くなる。建物だけでなく、その建物と建物の“間”に、どれほど人に開かれた空間があるかも大事」

そして「私の義理の母は、渋谷の桜ヶ丘に住んでいます。昔からの住民は、もっと歩ける街、また、自分たちの場所だと思えるところが増えるのはうれしい、とよく話します。そういう思いが結集して、公共の場所は出来上がるのだと思います」とも。



加えて、横山さんは、
「街や道路の、人の滞在時間を上げていくことも大切。渋谷は、歩道が狭いのに人が多い。仕事や買い物が済んだら、渋谷を出てしまう人も多いのでは。
 そうではなくもっと渋谷にいてもらうようにする仕掛けが必要で、それは経済の活性化にもつながるはず」

大西さんも、
「街にいる人の視点で施策が行われるのは大事。そして“人の営みが見えて、いいね”と終わるのではなく、継続性が大事。ただの通路になっていては街の魅力は生まれない。
 住民もそういった場を積極的に活用し、何十年と続いて、街の営みになればいい」と話しました。

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