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デザイン・アートを“身近にあって、長く付き合える”存在に。 ——「新デザインアートムーブメント」【SIW2019レポート】

開催: 9.19(木) 渋谷ヒカリエ 8/COURT

“多様な未来を考える12日間”「ソーシャルイノベーションウィーク渋谷」
https://social-innovation-week-shibuya.jp/2019/

DIVE DIVERSITY SESSION
「新デザインアートムーブメント」

2019年9月19日(木) 12:00~12:45
渋谷ヒカリエ 8/COURT
<登壇>
株式会社ミルデザイン 代表取締役
クリエイティブ・ディレクター
青木昭夫

2017年よりスタートした国内最大級のデザイン&アートフェスティバル「DESIGNART TOKYO」のクリエイティブディレクションを務める青木昭夫さん。
日本のアート業界の問題点と今後のあるべき姿、青木さん自身の活動に焦点をあてたセッションとなりました。

まず青木さんは「DESIGNART TOKYO」のビジョンについて、「デザイン・アートの枠を超えて、純粋に感動を与えるモノ・コト」だと説明します。



「別にデザインやアートである必要はないと思っています。例えば、彼女が横にいると普段の生活がいいモノになりますよね。猫もそうですよね。アートもそうです。身近にあるとちょっとだけいい気分になれる。アートをそういった存在にしていきたいですし、『DESIGNART TOKYO』は“感動の入り口”でもありたい。
ファッション、フード、スポーツ、テクノロジー、映像……感動を与えられるものだったら何でもいいと思っています。ドラゴンクエストに出てくる魔法のパルプンテみたいに、何が起こるのかわからないのがいちばん面白い」

つづいて、日本のデザイン・アートシーンの現状として、大規模イベントでは商業色、企業色が出過ぎるきらいがあり、しかしインディペンデントではビジネスになりにくいと指摘。



その上で「DESIGNART TOKYO」は30年やると覚悟を持って始めたと青木さんは言います。

そして、2030年までに世界最大級のデザインフェスである『ミラノデザインウィーク』に並ぶ規模にするという目標を掲げています。そのために青木さんが紹介した3つの指針は、現状のアートシーンの問題点の解決策としても有効なアイデアでした。

「1つめはクリエイティブ産業の活性化。観て終わり、ではなく値段をつけるのが大事。産業化が大切です。そのためにいまインテリアローン文化を広げています。
ローンと言うと、すごく胡散臭く聞こえますが、北欧では当たり前のカルチャー。家や車と同じように、いいものは2代、3代と生活をともにする前提で、ローンを利用して購入するんです。現在、ショップオーナーに相談して少しずつ輪が広がってきています。
またセカンダリーマーケット、いわゆる中古市場も盛んなので、資産価値となる考え方もあります。またアートの税制優遇措置で100万円未満の美術品は経費となるので、購入しやすいという側面もあります」



さらに2つめに「世界の人々が感化しあう意義のある交流」、3つめに「若手デザイナー&アーティストの後押し」を挙げます。
「海外アーティストから日本の人気は高いんです。でも、コミュニケーションに壁があったり、サポートが少ない。『DESIGNART TOKYO』では、毎年パートナーカントリーを決めて交流を深めるようにしています。
また、門戸が開けた大きなイベント、起爆装置がないと若手が育ちません。我々は“アンダー30”枠をつくり、30歳以下の若手が無料で参加できるようにしています」

デザイン・アートカルチャーが身近にある国をつくるには、まずアーティストが食べていける環境が必要です。海外では公共建築の費用の1%はアートに充てる「1% for Art」という文化制度を採用している国が多いことを挙げて、青木さんは日本のシーンの環境整備が急務であることを強調。

今年は10月18日からスタートする「DESIGNART TOKYO」。昨年よりさらに大規模に展開するとのこと。大いに期待できそうです。

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