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多様性に加え、多層性も考慮したエンターテインメントを —「エンターテイメントの多様性と多層性」【SIW2019レポート】

開催: 9.17(火) 渋谷ヒカリエ 8/COURT

“多様な未来を考える12日間”「ソーシャルイノベーションウィーク渋谷」
https://social-innovation-week-shibuya.jp/2019/

DIVE DIVERSITY SESSION
「エンターテイメントの多様性と多層性」

2019年9月17日(月) 13:15~14:00
渋谷ヒカリエ 8/COURT
<登壇>
株式会社an 代表取締役・プロデューサー
永谷亜矢子

2020年にひかえた東京オリンピック・パラリンピック、5G通信の実装など、エンタメ業界にとっても激動の時代と言えるいま。受け手の個々人のニーズはさらに多様化、以前のような勝ち筋が見えにくくなっています。

東京ガールズコレクション(TGC)のチーフプロデューサーや吉本興業の執行役員を務め、国内外でビッグイベントのプロデュースを手掛けてきた永谷亜矢子さんは、多様性と同時に“多層性”にも着目しなければいけないと言います。



「現在はテーマパークもアイドルも、飲食イベントも各カテゴリが多様化して隙間がないくらいの飽和状態です。さらにSNSの浸透で、エンドユーザーが“選べる時代”になっています。つまり主催者側のおすすめに共感してもらいづらいのです。
私がTGCをやっていた頃は、“みんなと同じ”が美徳とされていましたが、現在は“自分で選ぶのがかっこいい”に変化してきている。そのため、ひとつのコンテンツの中で“層”を考え直す必要があります」

多様ではなく、多層。例えば、ターゲット層をライト層、コア層。さらにリアル体験層とデジタル体験層などに分解し、マネタイズを多層化していかなくてはいけないと永谷さんは説明します。その上で最適なコンテンツを発見し、イノベーションを起こしつづけることが重要。



「TGCで例えると、コア層向けにはステージ上のスタイリングをその場で体験できたり、ランウェイで撮影できたり、バックステージツアーに参加できたり。デジタル層向けには、ARで人気モデルと一緒にランウェイを歩けたり、などといった施策が考えられます。
あとは、ターゲットをLGBTQに向けて、東京ゲイコレクションをする。これも当時、真剣に考えた企画でしたが、いまでこそ刺さるかもしれない」

来場者全員に同じサービスや商品を購買させるのではなく、レイヤーに合わせたサービスを提供する。特にユーザーの可処分所得に加え、可処分時間を考える必要がある、という発言は非常に印象的でした。

たくさんのアイデアをスライドで紹介した後、「いままで渋谷に縁が深く、これからも人生を共にしていく街だからこそ」と前置きした上で、渋谷の年越しカウントダウンイベントへの提言へとつづきます。



「そもそも誰の、なんのためのコンテンツなのか? 関わる人、参加する人は幸せなのか? さらに言うとコンセプトがない。イベントタイトルが『You make shibuya countdown』ですが、そのようなコンテンツはないですよね。コンテンツに落とし込めるコンセプトを作らなければいけません。現状は、スポンサーコンテンツばかり。しかし渋谷の街を世界に発信するなら、それにふさわしいコンテンツをつくらなければいけません」

東京ガールズコレクションや御堂筋ランウェイなどのイベントを成功に導いてきた永谷さんだからこその、ありがたい、愛のある意見。

「参加者も外国人か郊外ユーザーがほとんどで、経済効果も薄い。有料コンテンツスペースを設けたり、デジタル課金施策、“2020年、渋谷ハッピーニューイヤー”の合言葉で、ドリンクが一杯無料になるなど、できたらいいですね」(永谷)

会場には渋谷区職員の方も多く参加しており、セッション後の質疑応答も盛況でした。多様性と多層性。VUCAな時代のマーケットニーズにフィットするエンターテインメントコンテンツづくりのヒントが多くあったセッションでした。

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