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時代とともに変化しつづける信頼の定義とは? —「信頼のこれから。ひとと社会の信頼を再定義する」【SIW2019レポート】

開催: 9.15(日) 渋谷ヒカリエ ホールA

“多様な未来を考える12日間”「ソーシャルイノベーションウィーク渋谷」
https://social-innovation-week-shibuya.jp/2019/

DIVE DIVERSITY SESSION
Keynote「信頼のこれから。ひとと社会の信頼を再定義する」

2019年9月15日(日)15:30〜16:15
渋谷ヒカリエ 9階 ヒカリエホール A
<登壇>
Public Meets Innovation代表理事/内閣官房シェアリングエコノミー伝道師/ほか
石山アンジュ

いま世の中のほとんどは“信頼”で成り立っています。例えば、電車に乗って約束の時間に到着できるのも、銀行にお金を預けているのも、すべて“信頼”があるから。そんなスピーチから始まった石山アンジュさんのキーノート。

いま、「信頼のパラダイムシフトが起きている」という起点から紐解いていきます。その例として、マーケットを日々拡大しているシェアリングエコノミーを挙げます。



「メルカリ、Airbnb、Uber、Pairsなどは多くの人が使っていると思います。一方で、子供のころには親に『知らない人の車に乗っちゃダメ』と言われて育ったのではないでしょうか? 先程挙げたサービスは、赤の他人からモノを買う。赤の他人の家に泊まる。赤の他人の車に乗る、といったサービスです。昔といまでは常識が変化している」(石山)

これまでは企業やブランドという信頼のもとに、企業がサービスのクオリティや価格を決めてきましたが、現在は個人がクオリティも価格も決める時代になっていると指摘します。つまりB to BやB to Cではなく、C to Cのビジネスがシェアを拡大しており、信頼の定義も変わってきています。その変化を石山さんはこのように説明します。



「これからは信頼が、お金よりも社会的地位よりも資産になる時代です。豊かさの定義も“所有”から“共有”へ。資本価値は“お金”から“つながり”へ。個人の価値は“ステータス”から“信頼”へ。充足感の軸は“物質的なもの”から“精神的なもの”へ。主語も“わたし”(個人主義)から“私たち”(みんな主義)へと変わります。

かつて信頼の根拠は、近所付き合いなどの人間関係に委ねられていましたが、やがて国家や企業、組織に委ねるようになり、現在、多くの方はインターネットで個人の口コミなどを信頼の指標にしています。では、我々は今後、信頼の軸をどこに置くべきか?」(石山)

石山さんは問いかけをしながら、そのヒントを得られるように来場者の皆さんへ提案をします。それは「スマホをアンロック状態にして、隣の人と20秒間交換してみてください」という内容。来場者の皆さんは、恐る恐る挨拶をしながら、スマホを手渡しています。



「本当に嫌だ、という方もいるでしょう。人によってどこまで見られていいかは異なると思います。では、自分は他人を、何をもって信頼しているのか? 信じられない要素はなにか? どんな保障やルールがあれば信頼できるのか?」(石山)

近所付き合いが盛んだった昔は家の鍵を閉めていなかったし、子どもは地域の皆で育てていたというエピソードを出しながら、石山さんは現在のVUCAな時代において信頼の軸を置く指針を、最後に指し示します。

「“与える”ことで信頼は自分に返ってきます。等価交換ではない経済システムも世界中で現れ始めています。
私は今年の4月にフィジーに行きました。ケレケレという独自のシェアの文化があります。実際にわたしはフィジーに到着して、知らない方の家を訪れ、今日泊まらせてくれないか? とお願いすると、大歓迎してくれてご馳走もしてくれるんです。『わたしが強盗やテロリストだったらどうするのか?』と聞くと、そもそも他者を信頼する/しないの概念がないんですね。『信頼とは、自分自身を信じること』だと言うんです」



他者を信じられるか、どうかという判断したり、見極めるのではなく、自分自身を信じて決める。これは信頼の基盤が変化するなかで、確かに揺るぎない軸となりうることかもしれません。

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